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森で聴く音楽会“ヴァルトビューネ”

  • ikuckaclaire
  • 8月1日
  • 読了時間: 10分

7月5日(土)6日(日)に、河口湖のステラシアターという野外ステージで、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団による“ヴァルトビューネ”という演奏会が開催されました。


運良くその土曜日の公演のチケットに生徒さんが私の分も当選してくださり、古くからの生徒さんたちとご一緒に総勢7人で、一生の記念になる素晴らしい体験をすることが出来ました。

今でもまだ興奮冷めやらぬ!という感じです。


森で聴く音楽会“ヴァルトビューネ”


「ヴァルトビューネ」、これは直訳すると「森の舞台」。

ドイツ語でヴァルトが森、ビューネが舞台です。


ベルリンの郊外に、大きな森の中の公園があります。

その公園そのものも、その中にあるとても大きな野外ステージも、「ヴァルトビューネ」という名前です。

ヨーロッパの音楽や舞台芸術のシーズンは9月から6月ですが、毎年6月の最終週末に、ベルリン・フィルはそこで特別企画の野外コンサート開催します。

そのシーズン最後の演奏会の名前も、「ヴァルトビューネ」です。

毎年、元旦にはウィーン・フィルのニューイヤーコンサート、大晦日にはベルリン・フィルのジルベスターコンサートが行われますが、ヴァルトビューネもそれらと同じように、毎年恒例。

終わると次の年の指揮者が発表になる、というタイプの、人気の企画コンサートです。


1984年にベルリン・フィルがクラシック音楽の演奏会を野外ステージて初めて行なって世界的な話題となり、昨年2024年に40回目を迎えました。

NHKによって初めて日本で放映されたのは、1992年の回。

日本の音楽ファンは皆「いつか現地で聴いてみたい」と思ったでしょう。

次の1993年では小澤征爾が指揮をし、この森のコンサートの日本での人気も定着してゆきます。


毎回テーマがあり、そのテーマもそれに沿ったプログラムも、その時に選ばれた指揮者が中心になって決めています。

時にはポピュラー的な音楽やジャズや映画音楽なども取り入れることもあるような、気軽で楽しさを求めている企画で、普段のベルリン・フィルの演奏会とは演出も雰囲気も違い、そして鳥の囀りや風の音が音楽と一体になっています。


ベルリンの人々はもちろんのこと、世界中からたくさんの人が、お弁当とお酒とピクニックシートを持って聴きに行きます。

くつろいで聴いていますし、服装もとてもカジュアルで、リゾート地に遊びに来ているような雰囲気です。


ですから日本でも、ドイツ好きの音楽家や音楽愛好家にとっては憧れのコンサート。

私の歌の師匠もドイツにたくさんのご縁のある方なので、何年も前から行きたいと思っていろいろスケジュール調整をしているそうです。

そのうち、ベルリンのヴァルトビューネの客席に師匠ご夫妻がいるのが見られるかもしれません。

それくらいクラシック音楽好き、ドイツ好きの人には有名なコンサートです。


“ヴァルトビューネ2025 in 河口湖”の幸せ

ヴァルトビューネ日本公演。

今回がドイツ国外で演奏する初めてのヴァルトビューネです。

その企画にベルリン・フィルもとても力を入れていて、一年以上前から楽しみながら企画を練っていたようです。

このことに関して、ドゥダメルをはじめとして何人かにインタビューをしている動画がYouTubeにもあります。


ベルリンのヴァルトビューネは森の中にあり、鳥の囀りや動物の声が音楽と一緒に聴こえてきます。

オーケストラでの野外コンサートの音響というのはとても難しいもので、リハーサルに時間がかかります。

世界で初めて挑んだのはベルリン・フィルであり、今ではロサンゼルスのハリウッド・ボウルという野外劇場でのロサンゼルス・フィルハーモニックの演奏も毎年夏の恒例で、これまでずっとドゥダメルが指揮をしてきました。

ベルリン・フィルのデビューが異例のヴァルトビューネでありこれまで三回も振ってきたドゥダメルは、楽団員からの信頼もとても厚く、今回の河口湖ステラシアターでの音作りも、世界で一番の適任者といえるでしょう。

ドゥダメル曰く「様々なアメリカの音楽を組み合わせる、アメリカ大陸の各国を旅する素晴らしいプログラム」だそうです。

楽団員も「ヴァルトビューネでは、テーマを絞ったプログラムがやはり演奏していて楽しい」と言っています。


ベルリンであれ河口湖であれ、ヴァルトビューネを聴く意味とは。

ひとつは、普段オーケストラの演奏会に行き慣れている人が、年に一度だけ普通とはまったく違う音楽の聴き方をしよう。

また逆に、ベートーヴェンやチャイコフスキーなど一曲の演奏時間が何十分もというオーケストラ曲は聴きに行こうとはあまり思わない、という方が、短くて共感しやすい曲で気軽に、世界一のオーケストラの音楽を楽しんでみたい。

もうひとつは、特別に考えられたテーマによる普段あまり演奏しない選曲を、世界一のオーケストラが普段とは違う気持ちで全力で演奏するのを聴こう。

この三つのどれかでしょうか。

そのための野外ステージでのヴァルトビューネなのです。


どんな意味であれ、これだけ特別なコンサートの初めての国外公演に日本を選んでくれて、私たちの誇りである富士山の麓の森の中で聴くことができる。

本当に幸せなことだと思います。


ラテンクラシック音楽が私たちに届けるもの

今回のプログラムは北中南すべてのアメリカの音楽、とくに中米の、、というテーマでしたので、まだあまり知られていない作品もたくさんありました。

ベルリン・フィルのデビューが27歳で2008年のこのヴァルトビューネだったという、そのドゥダメルにしか組めない稀有なプログラム。

観客も、一生に一度の素晴らしい体験をすることになりました。


Kauyumari/Gabriela Ortiz

カモシカ/ガブリエラ・オルティス


”Martin Luther King” from Three black kings/Duke Ellington

マーティン・ルーサー・キング~スリー・ブラック・キングスより/デューク・エリントン


Danzón No.2/Arturo Márquez

ダンソン第2番/アルトゥーロ・マルケス


Santa Cruz de Pacairigua/Pablo Evencio de la Cruz Castellanos

パカイリグアの聖なる十字架 / エヴェンシオ・カステリャーノス


Alegría/Roberto Sierra

アレグリア/ロベルト・シエラ


Danzón No.8/Arturo Márquez

ダンソン第8番/アルトゥーロ・マルケス


Symphonic Dances from West Side Story/Leonard Bernstein

シンフォニックダンス~ウエスト・サイド・ストーリーより/レナード・バーンスタイン


私も、自分にとって新しい作曲家の新しい音たちに出会えて、とても貴重な幸せな体験でした。


三曲目が私の楽しみにしていたアルトゥーロ・マルケスの『ダンソン第2番』。

ドゥダメルの指揮するシモン・ボリバル・オーケストラの演奏で世界に知れ渡った作品です。

ドゥダメル自身のこの曲の目の前での生演奏には、もう完全に心も体も持っていかれ、すごい体験でした。

今でも思い出すと体温が上がります。

マルケスはメキシコの作曲家で、この作品のドゥダメルの演奏によって「オーケストラで奏でるラテンアメリカのクラシック音楽」」として世界的に有名になりました。

“ダンソン”というのはキューバの舞踏のひとつだそうで、そのメロディやリズムや音楽の構成などを取り入れて作られています。

ピアノと打楽器が活躍するこの曲の持つメロディの郷愁やリズムの荒々しさは、スペイン音楽を好む人の多い日本人にとってはかなり心を捉えられるもので、これからも更にファンが急増してゆくのではないかと思っています。

すでに日本のオーケストラでも演奏しているところも多くあるようです。


そして最後は、私にとってダンソン2番と並んで今回のメインプログラムであったレナード・バーンスタインの『シンフォニック・ダンス』。

バーンスタインの代表作『ウエスト・サイド・ストーリー』というミュージカルの中の、特徴的な曲を取り出して、オーケストラ版に作ったものです。

曲順もストーリーの流れとは少し異なります。

9曲が繋がって次々と演奏され、そのつなぎ目も編曲の注目点のひとつです。

入っている曲は『プロローグ』『サムウェア』『スケルツォ』そしてあの『マンボ』、そして『チャチャ』と『マリア』が混ざったような曲、『出会いの場面』『クール~フーガ』『ランブル』、そして『フィナーレ』です。


私は音楽大学時代にミュージカルの研究会に入っていました。

その日々の練習の中で、何度もこの『ウエスト・サイド・ストーリー』のワンシーンをエチュードして取り上げました。

映画も何度も何度も観て、劇団四季の舞台にもそのメンバーたちと一緒に行きました。

「これだけ人の心に入る音楽がある、その高さまで行く音楽家になる」「必ず人に伝わる音楽をできる音楽家になる」と強く思わせた、私のキャリアの出発点となる作品なのです。

今でもほとんどすべて歌うことができます。

私がそんな『ウエスト・サイド・ストーリー』を練習とはいえ初めて自分で演じたり歌ったりしたのは、奇しくもベルリンで初めてのヴァルトビューネが開催された1984年なのです。

ですから、今世界で一番熱いドゥダメルの指揮で、ベルリン・フィルの音で、この『シンフォニック・ダンス』を聴くことができたことは、とても意味のある体験でした。

ドゥダメルはパンフレットにあるインタビューで「早い時期からベネズエラのジュニア・オーケストラで『マンボ』や『シンフォニックダンス』を何度も演奏していました。

これらの素晴らしい名曲は、私の人生の一部なのです。」と言っています。

聴いていて涙が止まらず、あの頃ミュージカルのメンバーに無性に会いたくなりました。

人生の第三ステージ、これからも止まらずに更に深く音楽の中を進んでゆきなさい、と言われた気がします。


そしてアンコールも楽しかった!

ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートでお馴染みのヨハン・シュトラウス2世の『トリッチ・トラッチ・ポルカ』という曲があります。

『トリッキ・トラッキ』はそれをベネズエラ出身の作曲家が編曲したもので、出だしは原曲と同じでしたから「え?これをやるの?」と思いましたが、すぐにラテンの雰囲気になりました。

ウィーン・フィルに対するジョークでしょうか。

ラテンに変わった瞬間に思わず大笑いしてしまいました。


そして定番の『ベルリンの風』

これはベルリン・フィルのファン、ヴァルトビューネのファンには当たり前の曲で、ウィーン・フィルのファンにとっての『ラデツキー行進曲』と同じように定番のアンコール曲。

みんなそれが聞けるという前提で来ているという感じです。

パウル・リンケが作った、とても分かりやすく軽やかで爽やかで楽しい曲。

この人はウィーンにおけるヨハン・シュトラウス2世のような位置付けの、どんな人にも分かりやすい楽しい音楽をたくさん作った作曲家です。

この曲には手拍子を入れる場面と、指笛を吹く場面があります。

生徒さんに練習しておいてねと伝えました。


このブログの内容も含めての動画

私のYouTubeチャンネルの毎週日曜日『音楽のひとしずく』7月20日の回が、記録と感想の動画となっています。

何人もの生徒さんとご一緒に行くことができるということで、これまで大きなコンサートの前には必ずしていた予習講座の代わりに予習動画を作ってお渡していました。

好評でお役に立てたようで、その内容もこの動画に含めています。

ご一緒した生徒さんは、オーケストラのコンサートに行き慣れている方ばかりではなかったので、中にはアマチュア向けの初歩的なお話も交えてあります。


動画の目次はこんな感じ。


イントロダクション

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とは

森で聴く音楽会“ヴァルトビューネ”

ベルリン・フィルの“デジタル・コンサートホール”

世界の有名オーケストラといえば

オーケストラの楽器の種類と並び方

オーケストラ音楽は弦楽四重奏から始まった

オーケストラの演奏家と支える人々

フルトフェングラーと戦後80年から思うこと

ベルリン・フィルを振った指揮者たち

グスターボ・ドゥダメルの音楽が持つ愛

“ヴァルトビューネ2025 in 河口湖”の幸せ

ラテンクラシック音楽が私たちに届けるもの

エンディング


一生忘れられない体験となりました。

いつの日かきっと、ベルリンのヴァルトビューネを聴きに行こうと思います。

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